歯周外科治療

歯周外科治療って何ができるの?

歯周外科治療と聞くと「歯ぐきを切って歯石を取る手術」といったイメージを持たれるかもしれません。
しかし、私たちが本当に目指しているのは、患者様ご自身が日々のケアで歯を守れる環境を整えること。
進行した歯周病では、通常の歯みがきでは届かない場所に汚れが溜まり、再発を繰り返しやすくなります。
歯周外科治療は、こうした悪循環を断ち、セルフケアがしやすい口腔環境をつくるための“環境改善治療”です。
このページでは、そんな歯周外科治療の本当の目的と役割について、わかりやすくご紹介します。

歯周外科治療の本当の目的

なぜ歯周外科治療が必要なのか?

歯周病の主な原因は、歯に付着したプラーク(細菌のかたまり)です。
どんなに歯科医院で丁寧にクリーニングしても、患者様ご自身が日々の歯磨きでプラークを除去できなければ、歯周病は再発してしまいます。

歯周病が進行すると、歯茎の奥深くに汚れが入り込み、通常の歯ブラシでは届かない場所に汚れがたまりやすくなります。
これが治療を難しくし、再発リスクを高めてしまうのです。

歯周外科治療の本当の目的

歯周外科治療は、「歯ぐきを切って歯石を取る手術」ではなく、セルフケアしやすい環境を整える治療です。

 

たとえば、

◆深い歯周ポケットを浅くする
◆歯ぐきの形を整える

◆汚れがたまりにくい歯の形態にする

といった処置を通して、患者さんが自分でしっかりお手入れできる状態を目指します。

正しい治療と日々のケアの両立こそが、歯を守る近道です。

歯周外科治療でできること

歯周外科治療の種類

歯周外科、歯茎を切る怖い処置!と思われてしまいますが、歯を守るために多種多様な術式があります。

歯周外科の主な分類

 歯周基本外科治療

◆フラップ手術(FOP:Flap Operation)

歯ぐきを切開して一時的に開き、歯の根元や骨の表面に付着した歯石や感染物質を目で確認しながら徹底的に除去する外科的な処置です。
あわせて深くなった歯周ポケットの形を整えることで、再び汚れがたまりにくくなり、セルフケアしやすい環境をつくることができます。

歯周病の進行を止め、歯を長く守るためのもっとも基本的な歯周外科治療です。

歯周再生療法

◆エムドゲイン®・リグロス® などを用いた再生治療

歯周病で失われた骨や歯ぐき(歯周組織)を再生させることを目的とした高度な治療法です。
エムドゲイン®やリグロス®といった再生材料を使い、組織の自然治癒力を引き出します。

適応には一定の条件があり、すべての症例に使えるわけではありませんが、条件が整えば歯を支える骨の再生が期待できる治療です。

歯肉切除術

◆深い歯周ポケットを除去して清掃しやすくする外科処置

極端に深くなった歯周ポケットを、歯ぐきを一部切除することで浅くし、清掃しやすい状態に改善する治療法です。
ただし、歯ぐきの見た目(審美性)や知覚過敏への影響もあるため、慎重な術式の選択と事前説明が重要です。

歯周形成外科

◆機能性と審美性を整える
歯ぐきの形成手術

歯周病や治療によって乱れた歯ぐきや骨の形を整える外科処置です。
主な術式には、歯冠延長術・根面被覆術・小帯切除などがあります。

歯ぐきや骨のラインを整え、被せ物がしやすく、清掃しやすい環境をつくります。
あわせて、歯ぐきの後退による審美面の問題や知覚過敏の改善にもつながります。

治療の流れ

01 カウンセリング

歯科医師でカウンセリングを行います。
現状の問題点・解決方法を共有します。
また、喫煙噛み合わせ口腔内の炎症状況を確認し、治療計画をたてます。

02 クリーニング

歯周外科治療を行う前に、口腔内を清潔に保つことが重要です。
状況によっては、麻酔を使用して歯茎の中まで徹底的に清掃を行うこともあります。
炎症・出血があると、歯周外科治療に移行することができないので、口腔内の状況によりクリーニングの期間が異なります。

03 歯周外科治療

CT撮影などの必要な検査を行い、最終的な術式・計画を立案してオペを行います。
喫煙・噛み合わせ・口腔内の炎症状況により選択できる術式が異なります。
オペ時間は、短くて30分長いものでも70分程度の処置時間です。
当日から1週間は、痛み・腫れがあるので治療可能日は相談するようにしましょう。

04 メンテナンス

術直後からメンテナンスは始まります。
処置後の歯茎は脆く、弱っています。
無理なブラッシングは避けて、歯科医師と衛生士の指示に従ってメンテナンスを行うようにしましょう。

症例紹介

症例①矯正治療後歯茎が下がってしまって、もう直せないと言われた

Before

 

After

主訴矯正治療後歯茎が下がってしまって、もう直せないと言われた
治療期間2週間
治療費88,000円
治療内容上顎から結合組織採取を行い、歯肉退縮部に移植
治療のリスク処置後の出血・感染

▲治療のコメント

かかりつけでは、治療不可との診断で困っておられましたが、無事に下がった歯茎を回復できてよかったです。治療後2週間の写真なのでまだ、被覆面が粗造ですが、1年経過後はより自然な色味と表面になっております。転院されてしまい、術後1年の写真がないのが残念です。

症例② 左上の歯をぶつけて他院で治療してもらったが膿みが治らない

Before

 

After

主訴左上の歯をぶつけて他院で治療してもらったが膿みが治らない
治療期間4ヶ月
治療費国民健康保険の範囲内
治療内容根管治療・歯根端切除術・逆根幹充填(外科処置)
治療のリスク根管治療中の炎症による痛み/外科処置後の腫れ・痛み

▲治療のコメント

今回のケースでは、当院で再度根管治療を行いました。根尖の病変が大きく、再発を繰り返していたことより、嚢胞形成をしている可能性が高いと判断しました。そのことより、外科的な治療が必要になる可能性をお伝えした上で、経過観察を行っていました。3ヶ月後再発・排膿したので、予定通り歯根端切除と逆根幹充填を行いました。それからは再発することなく、1年経過のレントガン写真でも根尖病変の消失が確認できます。

症例③ 右上の歯が折れてしまった

Before

 

After

Before

 

After

主訴右上の歯が折れてしまった
治療期間6ヶ月
治療費保険治療の範囲内
治療内容根管治療・歯肉弁根尖側移動術・レジン前装冠ブリッジ
治療のリスク術後の腫れ・出血/歯冠歯根比不良による破折のリスク

▲治療のコメント

残存歯質の状態が良く、歯冠歯根比率1:1が確保できる場合においては、今回の治療方法が適応になります。他院では抜歯しないとダメだと言われたケースだったので抜歯せずに済んで患者様も喜ばれていました。

よくあるご質問

  • 手術は痛いですか?腫れますか?
    痛みのピークは当日から翌日ぐらい。
    服薬で痛みの対応を行います。
    しっかりと縫合するので比較的出血が少ないことが多いです。
    腫れのピークは3日後ぐらい1週間後には腫れが引いていることがほとんどです。
  • 治療後、仕事や日常生活に支障はありますか?
    食事がし辛い・口を動かすと鈍痛がするなどの支障をきたします。
    しかし、発熱した・寝込んだなどの全身に影響が出る可能性は限りなく低いです。
    ただ、忙しいタイミング・旅行に行く直前・会食があるタイミングは避けましょう。
  • 歯周病が再発することはありますか?
    日々のケア・メンテナンスを怠ると再発します。
    一緒に適切なケアを行いましょう。
著者画像

著者:西垣 友裕

◆所属学会:日本歯周病学会
◆参加勉強会:
アストラテックインプラント研修会
ノーベルバイオケアインプラント研修会
ストローマンインプラント研修会
東京SJCD (日本臨床歯科学会)ベーシックコース
The Japan Institute for Advanced Dental Studies ペリオコース
The Japan Institute for Advanced Dental Studies ペリオアドバンスコース
エムドゲイン歯周組織再生療法コース
Ivoclar Vivadent I P S Empress コンポジットレジン審美修復コース
IPRT 歯周再生療法マスターコース
その他多数の勉強会・ウェビナーに参加

◆海外の勉強会
EUROPEAN ASSOCIATION OF OSEEOINTEGRATION (ヨーロッパインプラント学会) Paris
ITI (インプラント学会) World Symposium   Switzerland Basel
AAP(アメリカ歯周病学会) San Diego